3093 零戦隼人
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戦争の是非。もちろん非を、少年時代に僕らはこのようなカタチで学びました。
安城北朝鮮中学の同級生のヤトウくんはお父さんに「ヒロヒト」と命名されました。ヤトウくんの家には天皇皇后両陛下の写真が飾られていました。
ヤトウくんのお父さんは僕とヒロヒトくんを零戦乗りにしようとしたのです。ある日、ヤトウくんの家に呼ばれると、そこには、制服姿の航空自衛隊のパイロットが正座して、我々を待っていてくれたのです。
ヤトウくんのお母さんが和菓子を出してくれたのですが、緊張して、僕もヤトウくんも手をつけられませんでした。
僕たち2人は、詰襟学生服のまま、自衛隊の車に乗せられて、岡崎駐屯所に連れて行かれ、そのまま拷問、いや、歓待を受けました。「キミ本当に高校生?大人に見えるねえ?」「なかなかの男前じゃん、俳優になれるねぇ」「なになに、スポーツマンだって?そりゃオンナにモテるだろう」。吐く寸前でした。
僕とヒロヒトくんは、高3の秋に、航空自衛隊航空学生の試験を受けました。試験には計器の図がたくさん出て、「今、貴様は高度〇〇フィート上空にいて、北北東15時の方向へ時速〇〇キロmで直進中。正しい計器を選び、その後南南東に進路変更するには、何度の角度で操縦桿を切り、何キロの速度で向かえば目標地点Bに〇〇時に到着するか、次の算式の中から正しいものを選べ。飛行高度と風速風圧は無視して良い」
まあね、選択方式ですからね、エンペツ転がせば当たるかもです。
その後、ヒロヒトくんは刈谷高校出たのに、陸自に入隊し、一年後に脱走兵となりました。