3953 間と時空のズレ2
4/29/17
「間」の話2 (長文ですが野球ファンはぜひ)
間合、というのは格闘技、武道でよく使われますが、野球、ラグビーその他、球技でも勝敗を左右する、目に見えない時空が、そこに確実に存在します。
そのほとんどは、対戦する相手との紙一重の三次元的距離だけではありません。ドラゴンズの牛島投手は打者が瞬きした瞬間を狙って投げると言います。
「間」とはすなわちリズム、野球で言えば投げるリズム、打つリズム、守るリズム、走るリズム、サインを出すリズム。すなわち、タイミングを自分のペースに持ち込むことが、リズムの真髄。牛島投手の瞬きとは、すなわち心の臓の鼓動のタイミング。
世の中で数多起こる交通事故等も全てがタイミング。1秒のズレで生死が逆転もする。
タイミングを掴むためのリズムはスポーツだけでなくて、ビジネスや日常生活にも連動する四次元宇宙哲学。
以下、第82回(2010年)選抜大会一回戦。
九州代表・自由が丘高校 vs 関東代表・東海大相模 の「間」。コピペですけど
狂った歯車 予期せぬ間
試合後のインタビュースペース。東海大相模 ・門馬敬治監督のやや茫然とした表情が印象的だった。
エース・一二三慎太(3年)の不調以上に、何かがおかしかったこの日の東海大相模 。あの8回に浴びた走者一掃の三塁打、そしてその直前におきた両チームにとって『予期せぬ間』がそれを象徴していた。
『予期せぬ間』とは?
8回裏、満塁のピンチを背負った一二三の元に、門馬監督は背番号『13』の宮崎大将(3年)を伝令に送る。それと同時に自由ケ丘の末次秀樹監督も三塁走者の板谷天博(3年)に伝令を送った。走ったのは背番号『14』
の久保田大輝(3年)。久保田は球審に確認をとってから走者の元へ走った。板谷に伝えたのは「パスボールもあるからボールを良くみておけ」という何気ない一言。
両チームが取った間合いが解けて、一二三が打者・外野貴雅(3年)へ初球を投げた後、球審がもう一度タイムを取った。自由ケ丘ベンチに何やら確認に走る。
ここで生まれた『間』が両チームにとって予期せぬものだった。
あらためて一二三が投じた2球目を外野が弾き返す。終盤に決定的ともいえる3点が入った。
この場面、伝令に走った久保田は「球審の方に伝令に行きますと伝えたのですが、代走と勘違いされたみたいです」と話す。しかし代走ではなく伝令。あのタイムはその確認だった。
試合進行の手順としてはまったく間違ってないし確認は当然の作業だ。が、一二三の元に伝令に走った宮崎は「イヤな予感がしました」と試合後に話している。東海大相模 にとっては不運だったとしか言いようがない。
この8回裏の攻防はあくまでも結果論。ではどこで、東海大相模 の歯車が狂ったのか。ひも解くと初回の攻撃にたどり着く。
実はこの試合、ポイントは一二三のピッチング云々ではなく、自由ケ丘の左腕・小野剛貴(3年)を左打者が多い東海大相模の打線がいかに攻略するかだった。門馬監督も試合前にそのことを話している。東海大相模 にとしては、小野のような左の技巧派タイプの投手に神経質になりすぎていた感さえあった。
それがわずか打者3人で先制できてしまった。苦労すると思われた投手からあまりにも早い得点。「いける」そんな気持ちが過信を招く。2回以降はちぐはぐな攻撃を繰り返し、小野をすっかり立ち直らせてしまった。
一二三としても、1対0の展開が余計にストレスを与えた。5回には意表を突かれた代打に同点打を浴びる。
チーム全体に生まれたわずかな『スキ』が球運に見放されるきっかけとなった東海大相模 。一つの小さな出来事が、最終的に試合全体の部分につながる。初回の先制は何も良いことだけではない、そんなことを教えられたゲームだった。
(文=松倉雄太)