少数派日記

社会派エロブログ、少数派日記です。

“安藤総理の少数派日記”

1182 さいごの東京タワー6

あれから何年が経ったのだろうか?
中国での移植手術を終えたYさんは、半年に一度のペースで電話をくれた。特別な用事はない。
「ああ、安藤はんか。わしや、Yや・・・。どうしてまっか・・・。わしの方はどうにかぼちぼちやってますわ・・・。あんたも、からだに気いつけ〜や。ほんなら・・・」という感じの内容で無事を知られてくれていた。
約束したことがひとつだけある。
実はYさんの浪商野球部時代の同期で超大物の選手がいる。ある年齢以上の方なら、野球を知らなくても、その名前くらいは耳にしたことがあろう歴史的な大物選手だ。現役を引退されてから、一度もユニフォームを着られていないので、気になさっているオールドファンも多いだろう。最近ではマスターズリーグに出られて、喝采を浴びたOという大物投手だ。
そのOさんが、実は浅草で息子さんとドイツレストランを経営されている。僕は一度、講談師の一龍齋貞花師匠の会で、その店に行ったことがある。OさんにYさんのことを話しした。
「Yかあ〜。そら、えらい懐かしい顔やなあ・・・。それで、あいつ、いま元気かいな。そんなことが・・・、まあ、長いこと生きてると、人間みなそれぞれ、いろんなことがありますわな。今度、おうたら、言っといてください、がんばりいや、・・・って」
僕は、翌日、電話でYさんにそのことを伝えた。
「ほうでっか、ほんなら一度、店に顔出さんとあきまへんな。安藤さんも一緒に行きましょう」
「もちろん、喜んで。Yさん体調がいい時、連絡ください。予約しときますから」
そんな話から一年後、Yさんから電話が来た。「体調もええんで、来週あたり東京へ行こかと思うんやけど、安藤はんの都合はどや?」「合わせます」と即答し、Yさんの上京日程も決まり、僕はOさんの店に予約の電話を入れた。
「ほうか、あいつ来るんか、楽しみやな〜。安藤さんおおきにな」Oさんも心待ちにした。
ところが、上京前夜、Yさんは体調を崩され、上京はキャンセルされた。
電話口で詫びるYさんに、「店は逃げないし、それよりYさんの身体が万全になるのが、先決ですから」という内容の受け答えをした。
それから、またさらに数年経ち、半年に一本の電話はいただいたが、Oさんの店に一緒に行くという約束はまだ果たされていない。
毎年、だいたいだが一月と六月にYさんから電話がくる。七月の中国行きが決まったこともあり、時折Yさんどうしておられるか気になっていた。
6/16日に知り合いの女性がスキルス性胃癌で亡くなったこともあり、胸騒ぎもした。少し怖かったが、Yさんが電話に出られることを祈りながら、僕の方から携帯に電話した。(つづく)