1658 臓器移植考21
日本医師会と厚生労働省が、海外での臓器移植を禁止した最大の理由は、ズバリ「利権」です。
前回、書いたように「臓器売買」「死刑囚ドナー」「闇ブローカーの暗躍」、あくまでもスケープゴードであり、本筋ではありません。
なぜなら、それらの存在は否定はしませんが、ほんの一部の暗部だからです。フィリピンでは国立の臓器移植センターがあり、正規な手続きを踏まえた「臓器売買」は法律で保護されていましたし、中国での「死刑囚ドナー」も正規の手続きが行われ、法律の元、ドナーの意志(当然拒否もできる)、厳しいメディカルチェック(国際基準に基づいた感染症有無など、ドナーとしてふさわしいかどうかの検査)など複合的な審査を経て、淘汰された中で行われるのです。
綺麗ごとではなく、当然のように、そこに至る「利権」争いが、別のステージで行われてはいますが、そこはアンタッチャブルの世界で立ち入ることはできません。つまりは郷に入りては郷に従え(Do in China as the Chines do)。いずれにせよ、中国国内では「合法」だったのです。
さて、日本での利権ですが、以前にも書きましたが、人工透析専門クリニックというのをご存じでしょうか? 慢性腎不全の患者さんは、自身で排尿が出来ず、血液中に溜まった毒素を透析装置により、一度、体内から出して洗浄して、また体内に戻す・・・という作業を、少なくとも、週3回は行わなくてはなりません。一回にかかる時間は約4時間、通院時間も含めると、平均6時間、つまり週3日はフルに時間を使えません。加えて食事制限、塩分制限、水量制限、そして透析後の極度の疲労と不快感で、不眠に陥る患者さんも多数おられます。
時間や居住地や仕事の関係で、通院できない患者さんは自宅で腹膜透析を自身で行うのですが、一日2時間の作業を、日に4回、これを一日も欠かさず毎日行わなくてはなりません。しかし、これとて5年が限界で、いずれは透析病院に通わなくてはならないのが現状です。
(つづく)