2101 晴ちゃんの ちいさな王様1
マウスの細胞を酸性の溶液に浸して刺激を与えると、あらゆる細胞に変化できる万能細胞(STAP細胞)ができるという研究の中心となった理化学研究所発生・再生科学総合研究センターの小保方(おぼかた)晴子・研究ユニットリーダー(30)は1997年、「第43回青少年読書感想文千葉県コンクール」(毎日新聞社・全国学校図書館協議会主催)で教育長賞に選ばれ、全国コンクールでも入選した。受賞作の全文を掲載する。
「いのち」について13歳の晴ちゃんの作文
「ちいさな王様が教えてくれた 大人になるということ」−−松戸市立第六中2年・小保方晴子
私は大人になりたくない。日々感じていることがあるからだ。それは、自分がだんだん小さくなっているということ。もちろん体ではない。夢や心の世界がである。現実を知れば知るほど小さくなっていくのだ。私は、そんな現実から逃げたくて、受け入れられなくて、仕方がなかった。夢を捨ててまで大人になる意味ってなんだろう。そんな問いが頭の中をかすめていた。でも、私は答えを見つけた。小さな王様が教えてくれた。私はこの本をずっとずっと探していたような気がする。
「僕」と私は、似ているなと思った。二人とも、押しつぶされそうな現実から、逃げることも、受け入れることもできずにいた。大人になるという事は、夢を捨て、現実を見つめる事だと思っていた。でも、王様は、こう言った。「おまえは、朝が来ると眠りに落ちて、自分がサラリーマンで一日中、仕事、仕事に追われている夢をみている。そして、夜ベッドに入るとおまえはようやく目を覚まし一晩中、自分の本当の姿に戻れるのだ。よっぽどいいじゃないか、そのほうが」と。私はこの時、夢があるから現実が見られるのだという事を教えられたような気がした。
小さな王様は、人間の本当の姿なのだと思う。本当はみんな王様だったのだと思う。ただ、みんな大人という仮面をかぶり、社会に適応し、現実と戦っていくうちに、忘れてしまったのだと思う。
いつか、小さな王様と「僕」がした、永遠の命の空想ごっこ。私は、永遠の命を持つことは、死よりも恐ろしい事だと思う。生きていることのすばらしさを忘れてしまうと思うからだ。それに、本当の永遠の命とは、自分の血が子供へ、またその子供へと受けつがれていくことだと思う。
王様は、人は死んだら星になり、王様は星から生まれると言っていた。私は、王様は死んでいった人々の夢であり願いであるような気がした。人間は死んだら星になり、王様になり、死んでから永遠がはじまるみたいだった。こっちの永遠は、生き続ける永遠の命より、ずっとステキな事だと思う。
ーーーーーー以上ーーーーー
とてもステキだと思いました。確かに中学二年生とは思えません。
テレビのバカコメンテーターの中には(ひとりは西川史子)、読んでいて涙が止まらなかった、などと白々しく「目立ちたがり目的 涙の大安売り」発言者も複数いましたが、そんなバカどもの評価を差し引いても、秀逸な作品であり、彼女の感性の繊細さを感じました。
次項にて解説します。