地元にはいろんなヤツがおる5。
前回の安城遷都の際、ぶらり、あんまき市役所を訪ねた。
特に用事はない。
職員諸君らが真面目に働いているか、抜き打ち検査である。
結果、実に真面目。
無駄口一つなく、引き出しを開けたり閉めたりして、終業時間の午後5時ピタリで業務はすべて完了、残業はせずに全員帰宅の優良業務。
「ところでお前、こんなところで何やっとるだぁ?」
あんまき高校の同級生のTくんと思わしき人物に声をかけられた。
高校時代のリーゼント、ダボパン、ペチャンコカバンの面影は遠く、エリート公務員を貫いてる様子で、何よりだ。
「いや、みなさんがちゃんと仕事をしているかどうか、抜き打ちで視察に来た」
「お前、相変わらず変なヤツだな。とりあえず、ここじゃマズいから、コーシーでも飲みいこまい」
喫茶店に誘われた。
「ところで、仕事はどうだい?なんか問題はないかい?」
「問題はないかいって言われりゃ、そりゃ問題だらけだw」
「ほ〜。例えば?」
「例えば・・・」
と言いかけて、Tさんはハッとした様子。
「いかんいかん、お前に話すと全部記事にされちゃう。あぶねえあぶねえ、ヤバいとこだった。つい言いそうになっちまったw。俺もう何もしゃべらんぞ!」
「何もしゃべらんぞってあんた、まだ何もしゃべっとらんじゃん!」
「いや、いっつもお前にしゃべると必ず書かれるから、絶対にしゃべらん」
クソ、よっぽどヤバい情報握ってやがる。
Tさん、地域のなんとかという部署で、市民の土日の行事には顔を出さなくてはならない。
それも巡回して。
だからといって平日に振り替え休日はない。
市道に雑草が生え、市民から「刈れ」と苦言が来れば、休日に作業着でカマ持って行くこともある。
スゲ〜な〜。
高校時代は授業が終わった瞬間に消えてた人物故、その本性を知る術なし。
本人は覚えているかどうか、高3の時、突然、「安藤、これ読んでくれ」と手渡された文庫本こそが三島由紀夫の「剣」(つるぎ)。
その頃、Tさんはアンダーグラウンドで「憂国の士」と呼ばれていた。
Tの家に潜入した者は側近のブラジル人、薫太欽定ボボのみ。謎の人物2人の潜伏活動。
いずれにせよ、Tに手渡された「剣」が私の三島デビュー。
主人公は原辰徳のような爽やか若大将。
剣道の話なので森田健作の方がわかりやすいだろうか? 自分にも他人にも厳格で、剣道を愛する剣道部主将、品行方正、正道を生き、曲がった事は一切しない。
剣道部の夏合宿。下級生の指導にも余念がない。下級生からも慕われた存在。
しかし、数人の下級生が合宿中の規則を破った。それも些細な問題だった。
それを苦にした主将は翌朝、合宿の林で、自ら生命を絶った。
あいつ、こんなことを考えながら学校に来ているのか?
三島の思想とTの感情が、私の中で交錯した。すなわち革命。
私はこの男が、将来、革命家になるのではと予想した。
まさか役人になるとはね。
「早く寝ると夜中に目が覚めて、そのまま眠れんくなる」なんて、もうおじいさんの領域じゃねえか。「だから頑張って12時まで起きるようにしとる」だってさ。
みんな頑張ってるなぁ〜
写真は、あんまき市を流れる猿渡川。
この上流に私の小学校と、住み慣れた田舎町がある。
台風が来ると、必ず川の様子を見に行った老人が流される。
南無〜。