少数派日記

社会派エロブログ、少数派日記です。

“安藤総理の少数派日記”

236  喫茶店設立状況10

道なき道を開拓しながら進む。遠方に見えるかすかな灯りに向かって。ヤブ蚊に刺され、マムシに追われ、ツルに足をとられ、それでも一歩ずつ進む。地図も食糧もない道程。
トヨジが現場からパクってきた材料をふたりで眺め「う〜ん」と腕を組むこと小一時間。こいつをどこでどう生かそうか。長い分には切ればいい、が、短い分はどうしようもない。計算通りに切ったのに長さが合わない。「うわ、天井と床が傾いてる、右と左で高さが1センチも違うぞ」。「この棚だけど、やっぱ外してくれ」「てめーふざけんなよ、人が苦労してつけたのに」。「あ〜あ、ついに道具まで壊れやがった」。
設計図と材料さえ整っていれば、もうとっくの昔に完成したさ。
整備された道路を車で行くのと、ヤブの中を手さぐりで行くだけの違い。遠方に見える灯りがある目的地は同じということ。
そんな男どもの作業を見ても女どもにはわかるまい。
遅遅として一見進んでいないように見える内装工事に苛立つ彼女たちの内心がその言葉尻からうかがえる。
バカ言え、床だけで4回も塗装して、こっちはシンナー中毒寸前になってんだぜ。トヨジは朝7時から作業。僕は深夜1時まで塗装と掃除と後片付け。まあ、体力的にこれがおっさんどもの限界かな。
僕とトヨジの頭の中にはすっかり完成予想図が出来上がっているので、今はおが屑と道具と中途半端な材料だらけの汚いゴミ屋敷だけど、女子たちには、そのままのうす汚れた現状しか理解できないらしい。
そんな中、救世主が現れた。
25歳、ブラジル人女性のファビちゃんだ。姉の勤める会社の子で、モデルばりの美貌。僕がバイトの子を探しているというので姉が連れてきた。
ファビちゃんは開口一番「うわ〜素敵〜」と言って、このおが屑と道具だらけのうす汚い店に入ってきた。「わたし、こういうの大好きで〜す」と。社交辞令だとしても嬉しいかぎりだね。みんなからおかしな店、とさんざんボロクソ変人扱いされていたから。
で僕は聞いた。「ファビちゃんさあ、素敵って言ってたけど、こんな汚い状況で、どうして素敵ってわかっちゃうの?」「わたし、完成したときの状況がイメージできます。絶対素敵なお店になります。わたし、こういう雰囲気もこういう人形や食器も大好きです・・・」。
こんな風に言ってくれたのはファビちゃんが初めてでした。いや〜危うく涙がこぼれそうに・・・。僕のこと、わかってくれる人は日本ではなくブラジルにいたんですね。