少数派日記

社会派エロブログ、少数派日記です。

“安藤総理の少数派日記”

259  テトラパック牛乳2

「せんせい〜この三角のへんなものは何ですか〜?」給食当番の脱脂粉乳分配係のSがT担任に質問した。
「それはテトラポットという新しいタイプの牛乳だ」T担任は誇らしげに答えた。
「いいかみんなよく聞け。ここにちょこんと小さい穴が見えると思うが、ここに、この塩化ビニールで出来た筒状の棒を差し込む。この筒を専門用語でストローと言う。そして指し込んだ反対側からチュルチュルと中身を吸いだすんだ。いいかみんなわかったか?わからん人は先生のところまでおいでん」僕たちははじめて尊敬の眼差しでT先生を見た。
「やっぱ先生ってスゲ〜や、何でも知ってやがるぜ」クラス一の不良でタバコを吸ったことがある、と豪語していたKまでもが、T先生を熱い視線で見つめていた。
みんながみんな、初めて見るテトラポット牛乳に歓喜した。ある者は家に帰るや家族全員を集め興奮して報告し、ある者はスケッチブックを取り出し熱心にスケッチしていた。またある者はまだ会ったこともない遠方のペンフレンドに「きょうの給食でテトラポットが出ました」と手紙を書き、僕は僕で兵藤ゆきミッドナイト東海(深夜放送)に「きょうの給食でテトラポットが出ました。リクエストは天地真理の・・・」と書いて投稿したところ安城市出身の兵藤ゆき姐が放送で読んでくれました。
結局、テトラポットは毎日ではなく、翌日からは再び、瓶に戻ったのですが、テトラポットの日は生徒の給食に対する意欲が違う、前向きに取り組んでいるという教員の報告を受け、市教育委員会は月に一度のテトラポットデ―を決めたのです。瓶を机に隠したYも「うん、こいつなら飲めら〜」とストローと呼ばれる筒を嬉しそうに見つめていました。
そんな中、「せんせい〜、このテトラポットの空きテトラポットは家に持ち帰ってもいいんですか〜?」とOの勇気あるひと言が飛んだ。みんな、気になってはいたことだが、なかなか聞くことができなかった。
「たぶん大丈夫だと思うけど、一応、学年主任に確認してみる」とT担任。その後の職員会議で議題に上がり「持ち帰る場合、必ず中身を水洗いしてから持ち帰るように」という条件付きで空きテトラポットの持ち帰りが認められ、クラスの半数が持ち帰った。あの不良のKも「灰皿にちょうどいい」などと言って持ち帰ったクチだが、後日、彼の家に遊びに行くと、当時では珍しいカラーテレビの上にそれが飾られていた。「おい誰にも言うなよ。言ったらぶっ殺すからな」と赤面しながら脅したKの顔も今では懐かしい。
そんなわけで、僕らはテトラポットの大ファンになったのだが、T担任のせいで、僕は(僕らは)つい最近までテトラパックテトラポットと呼んでいた。
そんなテトラポット、いやテトラパックも今や紙製ではなく、完全なる半透明の塩化ビニル製になり、大きさもひと回り小さくなり、当時の情緒も面影も見ることができない。もしKが持ち帰った、あの日のテトラポットがあの日のまま、保存されていたならマニアの間で少なくとも5000〜10000円で取り引きできるでしょう。それほど希少価値のあるものなのです。
今から思えばテトラポットが給食に出るわけがないのですが、当時はテトラポット自体が何モノであるのか、みなもよく知らなかったみたいです。