少数派日記

社会派エロブログ、少数派日記です。

“安藤総理の少数派日記”

1401 突発性難聴5

退院後、新宿のカラオケ専門パブ「歌謡スタジオ101」のマスターからお見舞いの電話をいただきました。
「安ちゃん、大変でしたね。実は俺も同じ病気だよ。だけどね、安ちゃん、この病気はさ、歌を唄うもんにとっては宿命的な病気だから、仕方ないんだよ。諦めな・・・」
歌を唄うもんにとっては宿命的な病気・・・と聞いて、なんだか少し嬉しくなったが、よく考えてみると、ぜんぜん嬉しくない。入院した二週間は、自力でまったく眠れず、生まれてはじめて睡眠薬の世話になった。それも毎晩。退院してからも、睡眠時には苦しんだ。耳鳴りがひどくてまったく眠れない。だが、一生、睡眠薬のお世話になるわけにはいかない。ある時から区切りをつけ、自力睡眠にチャレンジした。だが、慣れるだけで、実は今も苦しい。一応、睡眠剤は常備しているが、なんとか手を出さずに持ちこたえている。
しかし、それより苦しいことがある。
リクルート症候群」という「拡張性なんとか」という難しい病名がついている。これは金属がこ擦れ合ったり、モノがぶつかり合ったり、人体にとって不快な音を拾って内耳で拡張させるという、原因不明、治療法未開の病気だそうです。
例えば、病院の食堂で、誰かが箸やスプーンを床に落としただけで発生するその音で、全身が「ビクッ」とするほどの不快感というか、ストレスに侵されてしまう。決してオーバーではなく、食器同士がぶつかり合う音とか、掃除機の音とか、普段、ほとんど気にならなかった音が、地獄からの響きに変わるのです。
同室にはF15戦闘機のエンジン音でやられた現役パイロットや、戦車の砲火部隊に所属して爆音でやられた陸軍兵士もおりました。
特に陸軍兵士は僕と同じくリクルート症候群にもやられたクチ。
突発性難聴は発病してもう20年のベテランです。耳鳴りは、慣れませんよ。諦めただけです。でも、最近は女房が食器を洗う音がやたら気になり出しましてね。わざと当てつけでやってんのかって、大ゲンカしちゃったんですよ。でも、気になるのは自宅だけじゃなくて、基地の食堂でも、ガチャガチャやるあの音に耐えられなくて、ようやく自分の耳がおかしいことに気づきましてね。それで岡山の基地からここまで治療に来たんです。岡山にはない検査機器がここにはあるんでね・・・」
「それで、多少は良くなりましたか?」
「ぜんぜんですね・・・」
退院後の話。新安城ビリケンカフェで営業終了後の静かな店内で、少数派日記をブログっていた時、母親が突然、掃除機をかけ店の掃除を始めました。
「あと少しで書き終わるから、それまで掃除機を待ってくれんか?」
「こっちだって都合があるんだから、あんたの都合にばっか合わせられないわよ」
「いや、その、掃除機の音が苦痛なんよ」
「なに言ってんの、あんた、さっきまで友達と大声でしゃべってたじゃないの」
「いや、人としゃべるのはいいんだけど、そういう機械音みたいなのはダメなんだ」
「ふ〜ん、ご都合のいい耳でございますこと」
これ以上、やりとりを行うと殺意すら感じてしまいそうなので、結局、僕がパソコンを閉じ、掃除が終わるまで、ベッドで横たわることにした。
母親が特別ないじわるばあさんというわけではなく、箸が床に落ちただけで、ストレスになる・・・なんて経験者でしか、わからないと思いますが、そりゃ、しんどいもんですよ。
思わぬ、長編になりましたが、みな様がこのようにならないために、最後にもう一言。「めまい、耳鳴りきたら、すぐ耳鼻科」。(おしまい)