少数派日記

社会派エロブログ、少数派日記です。

“安藤総理の少数派日記”

1771 浄土からの声が聞こえる20

「おとうちゃん・・・本当におとうちゃんなのね・・・」
声に覇気も張りもない、まるで死者のような、かすかな声だった。
しかし、それは紛れもなく、佳子の父・拓馬の声だった。
「おとうちゃん・・・無事だったの? あたし・・・あたし・・・」
声にならない声を佳子は振り絞った。
「すまねえ、ほんどにすまねえ・・・佳子・・・」
「ううん、もういいの、そんなことどうでもいいの・・・それより、おかあちゃんと、ばあちゃんは・・・・元気なの、無事だったの・・・?」
「・・・・・」
「ねえ、おとうちゃん、答えて・・・あたし、大丈夫だから・・・」
「佳子・・・ほんどにすまねえ・・・」
「・・・・・・・」
「ばあちゃんは、病院さ、地震で崩れてさ、そのあと、津波で海さ、持ってかれちまったみてえで、警察の人やら、消防団の人やら、自衛隊まで来て探してくれたども、見つかんねえままだっちゃあ」
「おばあちゃん・・・かわいそう・・・」佳子は嗚咽した・・・・
「おかあちゃんは・・・?」むせびながら、佳子は尋ねた・・・。
「ああ、おがは無事だっぺよ。いま、宮城の病院さへえってるよ」
「えっ、おかあちゃん、一緒にいるの? おとうちゃんと一緒なの? おかあちゃん無事なの?」
「まあ、無事っちゃあ無事だけんども・・・」
「どうしたの? ひどい怪我でもしたの? ねえ、おとうちゃん、どうしたの?」
「まあ、怪我っちゅうか・・・、おがも大変やったから、いろいろあっての。佳子に長いこと、連絡できんかったのも、いろいろあってのお・・・」
「もう、そんなことどうでもいいわ。今から、そっち行く。どこの病院か教えて、おとうちゃん・・・」
「それが、その・・・」
「どうしたのおとうちゃん・・・教えて、宮城の何処?」
「いま、来られても困るっちゃ・・・」
「何言ってるのおとうちゃん・・・?何があったの?」
「こんど、話すっちゃから、今はまだ、来ん方がええっちゃ」
「意味がわからないわ・・・おとうちゃん、ねえどうして、おかあちゃん、どうかしたの? あたし、驚かないから教えて・・・」
「佳子、また、電話するっちゃから、すまんな、おとうちゃんを許したってや・・・」
「待って・・・」
電話は一方的に切れ・・・その後、拓馬の携帯の電源は切られた。




(つづく)