2049 インドにいるもうひとりのオレ
二十数年前、ほんの少しの期間だったが、彼女が主宰する出版編集社で、少しだけ原稿を書かせていただいたことがある。
先週、BOOK OFFで見つけた彼女の著書「わたしは誰」(井形慶子著・こーりん社刊)を、昨夜、読了したからではないと思うが、見知らぬ女性から、突然の電話が来た。
書籍の内容は、やはり、彼女と出会った二十数年前の話で、そのころ、彼女は「母親に殺される夢」に悩まされていた。カウンセリングを受けたりした後、自身の心の中の幼年時代、すなわちインナーチャイルドを求めて、インドへ旅に出る・・・という自叙エッセイ。
電話口の見知らぬ女性はこう言った。
「安藤総理のお電話でよろしかったですか?」
「いかにも」
「突然で大変恐縮ですが、実は昨夜、安藤総理は、インドにいらっしゃいましたか?」
「それは妙な話。それがしは、インドに行った覚えはない。香港なら今から行くところだが・・・」
「そうでしたか、それは御見それいたしました。実は何を隠そう、昨夜のこと、インドの繁華街で安藤総理を見かけたという目撃情報がございましたので・・・念のため」
「それは、わざわざ報告ご苦労。他人のそら似というやつですな」
「それを伺いまして、ワタクシ、安心いたしました」
「苦しゅうない」
電話口の女性は、総理が所有する信用板(クレジットカード)会社の社員だと身分を明かした。
「実は昨夜のこと、現地時間、午後6時30分から午後8時30分の間、インドで、安藤総理のクレジットカードが使われた形跡がございまして、確認の飛脚(電話)を飛ばした次第にございます」
「なにヤツ? 無礼者めが!。で、当方の被害総額は?」
「はい、二か所で使われまして16万両と33万両にございます」
「大金だな? それは困り申したぞ」
「ご安心くださいお代官様。貴殿の信用板の最終使用日は先週のローソン北沢5丁目店の575円。過去、どんなに遡っても、貴殿の信用板で、一度に5万円以上の買い物をされたことは、ただの一度もござらん。さすがに当方の頭脳箱(コンピュータ)が、これは怪しいぞと、自動安全策(セキュリテーシステム)を作動させ、事件を未然に食い止めました・・・」
「御意。そ、そうであったか。いやいや、当方、高額な買い物は現金で支払う主義にて・・・う〜ん、そうであったか。褒美をつかわすぞ、オンナ」
「はは、有り難き幸せ・・・」
アイやー・・・先月の渡米、シカゴで買い物をした「ターゲット」という大型ショッピングセンターからの情報流出。本屋のお姉さん、大丈夫かな?ターゲットだって。
油断も隙も見せないが、油断も隙もない。
ちなみにITIQのトップはダントツでインドだそうだ。続いて中国、韓国、米国、日本は10位くらいだそうです。
「気いつけなはれや」