少数派日記

社会派エロブログ、少数派日記です。

“安藤総理の少数派日記”

609  上海日和3

事実上の撤退が決まった21日夜、これをいつ、どうやって従業員に伝えるか、そして、いつまで営業を続けるか、それをS店長、N料理長、中国人マネジャーと僕の4人で話し合った。
昼の繁盛店と裏腹に夜の閑古鳥を見れば、この店がヤバイことは、従業員が一番よく知っている。昼間の営業時間の活気しか知らない常連客にしてみれば、まさに寝耳に水、晴天の霹靂だろうが、従業員にしてみれば、エックスデ―がついに来たか・・・という程度だろう。
翌22日、とりあえず、板場の長である中国人社員のC君に話をした。C君は板場のまとめ役である。日本に滞在したこともある好青年で料理の腕も抜群だ。もし、僕がいつか飲食店をやる機会があれば、ぜひにも欲しい人材である。彼は「わかりました。残念だけど、仕方ないですね」と理解してくれた。彼が中国人従業員のリーダーなので、彼の口から従業員にそれとなく伝え、全員に伝え渡った時点で正式に報告することにした。
営業日はN料理長とC君が残りの材料から逆算して、この週の金曜日、つまり25日までの営業とした。
それでも、撲とS店長、N料理長は、なんとか一発逆転は無いものかと、毎日毎日明け方まで模索した。昨夜も朝5時まで、話をした。僕がここに来てから、午前3時前に寝た夜は一度もない。
3月23日、最後の営業日までいよいよカウントダウン。あと3日ですべてが終わる。しかし、店はいつもとまったく変わりない。
「なんか閉店するっていう実感がまったく沸かないっすね・・・」
何気なくN料理長がそう言うと「本当にそうだよね」とS店長が頷いた。「それは自分の金じゃないからだよ・・・」と僕はそう言った。
もし自分の金だったら、そうとうヘコむ額の損失金。これが経営者と従業員の大きな差。彼らは経営者感覚で、店を運営してきたつもりだったが、それは感覚であって実態ではなかった。
3月24日、そこそこの来客数でランチはにぎわう。嗚呼、今日と明日でランチは終わる。毎日、毎日来てくれる名も知らぬ顔見知りの常連さん。「短い間だったけど、ありがとうございました。来週はもうお会いできませんね。明日は最後ですから必ず来てくださいね」とひとりひとりにテレパシーを送る。
3月25日、そんな常連さんに限って、どういうわけか、この日は訪れない。人生ってそんなもんだろう。ここに来て、たった2カ月の撲なんかどうでもいい。しかし開店から3年もいて、客のほとんどと顔見知りのS店長はどんな気分で、最後の「ありがとう」を伝えるのだろうか?
(つづく)