少数派日記

社会派エロブログ、少数派日記です。

“安藤総理の少数派日記”

201  臓器移植考・2

在NYの日本人H医師と中国での臓器移植について、長い話をしました。H医師の見解はどちらかと言うと、日本のマスコミが大合唱するように否定的なものでした。
その理由はひと言で言うと「違法」だからということです。では何が違法で、どうして違法なのかということをご存じなのでしょうか?
産経新聞社会部・木村良一記者著「臓器漂流」(ポプラ社刊)に安藤の実名入りで、そのいきさつが詳しく書かれています。
2002年、厚生労働省臓器移植相談室を訪ねた私は担当官らと、海外での臓器移植の合法性についてディスカッションを重ねました。おおまかな結論は以下の通りです。
1・患者を海外での移植病院に紹介し、紹介手数料などの金品を授受することは臓器移植斡旋法に抵触する。
2・ただし、患者が自己責任で自力で渡航し、自分の意思で海外で移植を受けるに関しては違法行為とは言えない。また、何人も海外渡航中に急性腎不全などで緊急の移植が必要だと判断された場合も違法行為とはみなされない。
この2つに関しては非常に明確でわかりやすいと思います。
当初は医療サービス行為の一環として、規定の手数料を設定する計画でしたが、そうすると「臓器移植斡旋法」に抵触するため断念しました。
しかし、移植受け入れ病院があるのに、計画そのものを断念することは医療機関としてどうしたものか。結局、アメリカの富豪家から寄金を募り、我々の経費を出してもらうことに成功し、これなら患者との金品のやりとりもなく進められるという解決方法が見つかりました。これを厚生労働省に提案したところ、金品の授受がなければ「臓器移植斡旋法」には抵触しないと判断され、我々のチームは活動をスタートさせたのです。
我々は調査に約半年をかけました。日本から複数の医師をボランティアで中国の病院に視察に来ていただき、施設の安全性や担当医師の技量、看護師らスタッフの充実さ、食事、投薬など可能な限りあらゆる面での安全性かつ正当性を調査していただきました。
移植希望患者に紹介するに十分な医学的根拠を得た上で、ホームページを作り、パンフレットも作製し各医療機関に配布、東京の透析患者の協会にも出向き、説明もしました。
日本で最大級の透析患者協会のS会長は「もし、それが本当に実現したら、どれだけ多くの人々が救われることでしょうか?これは宝くじに当たったのと同じです」と大喜びしてくださいました。厚生労働省の諮問機関でもある「日本臓器移植ネットワーク」のY理事も我々の活動に賛同してくださり、すぐにでも紹介していただきたい重度の患者がいる、と話しておられました。
「これで多くの患者さんの役に立つことができる」と私を含むチーム4人は半年間の努力が報われたような気がしていたのです。
しかし、5000部ほど作成したパンフレットを250部ほど各医療機関に配布した数日後、厚生労働省から呼び出しがかかりました。
「パンフレットを不特定多数に配布することは臓器移植斡旋法に抵触します」
「しかし、我々は完全ボランティアで患者から金品を受けとらない。営利目的ではない。現にパンフレットも寄付金で賄ったし、複数の医師たちは全員自腹で施設の安全を確認するため中国に来てくれた」
「とにかく公募はダメです」
「公募がダメなら私募ならいいのですか?」
「私募ならいいです」
というわけで、当初の見解と矛盾するのですが厚生労働省は「あなたたちが、従わないのなら新しい法律を作って、もっと厳しくすることもできる」という脅しまでかけてきたのです。
透析患者のためにと、ここまで労力と時間とお金を費やしてきた僕らですが、さすがにバカバカしくなり「もう止めよう」という結論に達し、NYのオフィスにも打診したところ、同じくバカバカしいということでチームは解散することに決定したのです。
ところが、一本の電話から事態は急展開したのです。(つづく)