少数派日記

社会派エロブログ、少数派日記です。

“安藤総理の少数派日記”

879 117阪神淡路大震災2

時間が経つにつれ、社内の小さなテレビ画面に惨状が映し出される。倒壊した高速道路、横たわるコンクリートのビル、民家の瓦礫、そして火に覆われた神戸。軽口こそ少なくなったが、それでも緊張感はない。ある重役の愛人が編集部に乗り込んで来て「ここから飛び降りて死んでやる〜」と窓によじ登った時の方が緊張した・・・と、ある先輩記者が言っていたのを思い出した。
死者6434名、不明者3名、負傷者4万3792名。うち、約80%にあたる5000人が家屋の一階で就寝中に倒壊のため圧死した。検視できた犠牲者2456名のうち、実に92%にあたる2221人は被災後15分以内に即死だったという。あらためて、この事実、教訓から、我々は日常の安全を学ばなければ、あの方たちの犠牲は無駄になってしまう。今一度、就寝場所の安全性を確認されたい。家具は倒れませんか?テレビが飛んで来ませんか?、すぐに屋外に出られるルートは確保してありますか?ペットボトルに水を入れ、数本は屋外の敷地内に置いておきましょう。
数日後、日刊ゲンダイ大阪本社のMカメラマンのご両親が倒壊したブロック塀の下敷きになり、圧死したという悲しい知らせが東京に入る。彼はまだ若い。二十代後半。甲子園で野球の取材がある時に世話になった。もの静かな好漢。カメラの腕もいい。
総務の子が封筒を持って香典を集めに回る。ひとり1000円は悲しい金額。だが、同僚の肉親の死で、髪の毛一本分だけ社員の気持ちが神戸に近づく。養老猛司さんが言う「3つの死=1・自分の死、2・肉親、知人の死、3・見知らぬ人の死」の3番から髪の毛一本分だけ2番に近づけた。それでも、東京は何も変わらない。
数か月後、彼は東京に来て、ひとりひとりに頭を下げた。この会社にもこんな礼節の厚い男がいるんだな、と感心した。僕は彼の手を握り哀悼と励ましの声を掛けるしかできなかった。彼は自らも被災者なのに、すべてのご香典を被災支援金として寄付した。「そのほうが、両親が喜んでくれると思いまして・・・」と。(つづく)