1918 護衛艦DDH143しらね
青年は海上自衛隊第3護衛隊 護衛艦DDH143しらね の乗組通信員だった。
だが、現在は・・・・リハビリの車椅子だ・・・。
これが、青年の「しらね」
安藤総理が、青年と知り合ったのは、今から14カ月前の軍人病院でのこと。
当時、青年は寝たきりの状態だった。
くも膜下出血で、船内で倒れた。
青年は「幸運」だった。船内ではあったが、陸に停泊中であった。もし、海上だったら、青年は、今、ここにいない。
青年の生存確率は「1%」と医師団から告げられた。逆から言えば、死亡率「99%」だ。しかし、青年は、いま生きている。「幸運」だけでなく「強運」も持っていた。
8度に及ぶ、頭部の手術。青年は、いま、会話もできる。パソコン操作もできる。
安藤総理が青年に尋ねた。「プラモデルつくれる?」
「昔はつくれました」。青年はそうこたえた。
安藤総理は、SSさんにお願いして、青年が乗っていた「しらね」を買ってきてもらった。700分の1のスケール。とても細かい。パーツは300くらいある。
「一日に10パーツずつ組み立てて、ひとつきかけて、ゆっくり作ってね」と言って渡した。
「ありがとうございます。がんばってみます」
完成が楽しみである。
しかし、現実は美しい話ばかりではない。
安藤総理は青年に尋ねた。「ほかに何か欲しいものありますか?」
青年は、しばらく考えてこたえた。
「自由に動かせる、からだが欲しいです・・・」
安藤総理は青年の予期せぬ回答に返すことばが出なかった・・・。
「リハビリ・・・頑張るしかないね・・・」
そんな薄っぺらな言葉に無力を感じた。
「はい・・・がんばってみます」
青年は、焦点の定まらない目で、安藤総理を見た。