6/28/21
先週土曜日の話です。お暇な人限定です。
私もついにZONE(ゾーン＝領域)に入りました。
午前、バスに揺られ笹塚〜立正佼成会病院、診察、→バスで笹塚、高級リサイクルショップ→古本屋→新開店鰻屋(視察)→裸電球(居酒屋)→しまクリニック(皮膚科)→サイゼリア、と活躍しました。
ちょうど、サイゼリアでドリンク飲んで休憩していると、立川から北千住経由で来た、という妙齢の女性が私の前に座り宗教関連の会報誌をくださいました。
女性が言うには「人間、歳をとっても、オシャレが大事だ」と諭すのです。
何を言い出すのかと思ったら「あなたの着てるシャツは裏返しです」と。
女性が気がついたのは、本来、左胸にあるべきミズノのマークが右側にあるとのこと。ボタン、襟付きのポロシャツなのに、ボタンが内側についていたこと、メーカーのタグが首の後ろから見えていた、などでした。実に鋭い観察力だと思いました。
ここに至るまで、多くの人々とすれ違っているのに、誰も気づきませんでした。これは、ワザと裏返しに着たわけではなく、まったく気にもとめず着た結果です。
女性に「あなた、そんな人生で恥ずかしいと思わないのですか？」と言われ、
「いやいや、逆に念願のゾーンに入ることができて、むしろ嬉しいです。人間は何かにとことん集中すると何も見えなくなる。野球でもラグビーでもゾーンに入ると集中してボールしか見えなくなる。フェンス激突のファインプレーはまさにそれだ。大谷さんなんか4打席に1度は完全にゾーンに入って160kの変化球も止まって見える領域なんだろう。だから、オラぁ嬉しいだ」
恥ずかしいどころか気分が良かった。
笹塚サイゼリアを出るとショッピングモールと繋がり、右に靴屋、左に西川の布団屋がある。女性は鋭い洞察力で「あ、あれ可愛い、買って〜」とコンバースの白いスニーカーを指さした。
こちらもいい気分なので、思わず「おいよ！」と言ってしまった。
女性はキャッキャ喜び、店員にサイズを告げる。気になるお値段は5500円だった。
女性が試着中に、私は店員をレジの裏に連れ込み「半額にしてくれ」と凄むが、「それはムリです」と空気の読めない今どきの店員。「でも、お客さん、ネットから入ってもらえば、自動的に1000円引き、さらに店から新規加入で500円引き、さらに福引券一枚がつきます」。お、アニキ気が効くじゃん、それで行こう、つうわけで、アニキにスマホをわたし、チャチャっと登録して4000円でゲット。女性大喜び。なんでも立川には洒落た靴屋がないとか。はるばる遠征した甲斐あったじゃん。
そのやりとりを目撃した後ろの客が「あの〜これ良かったらお使いください」と福引き券の余りをくれた。
福引き所に行くと、ガラガラポンではなく、なんやらデジタルの福引き。こんなんいくらでも当たらんように操作できるやん、と思いつつ券を出す。
靴屋がくれた本抽選券1枚、見知らぬご夫婦から頂いた予備券8枚、サイゼリアでもらった1枚を足して19枚。
「1枚足りないけど、まあいいや、どうぞ2回引いてください」とワシの裏返しのミズノを見てビビったか、抽選のアニキ、気が効くじゃん。
見事ポケットティッシュ1個と500円の商品券をゲット。ついてるじゃん。
で、モールを出ると、今度はベンチでゴロリ、熟睡してる30代のお父ちゃんの顔に、上から激しいグーパンチをかましてる3〜4歳の少女がいた。かなり激しい衝撃音がするがお父ちゃんは熟睡している。もしかしてご遺体か、と思い近づくとどうやら生きている。
「やめて、お願い、叩かないで、眠いの、ちょっとだけ寝かせて」
「やだよ〜、寝ちゃやだよう〜、遊ぼうよ〜」
そう言って少女はお父ちゃんの顔面を殴り続ける。
ドメスティックバイオレンス、家庭内暴力、児童相談所じゃん。
思わず声をかけた。
「お嬢ちゃん、叩くのやめてあげな、お父ちゃん眠いから、寝かせてあげな」
暴力少女は、通りすがりの素浪人の言うことなど、まるで無視。
「打つべし！打つべし！打つべし！」
段平のおっちゃんの教えを忠実に実行する
ここで私はポケットに手をやった。
自分には伝家の宝刀、500円の商品券がある。ちょうど前にウエンディーズもある。この商品券で少女にクリームパフェでも食わせてやり、その間だけでも、お父ちゃんを安らかにさせてやれないものか。ただし、これはギャンブルである。間違えば誘拐未遂。しかもポロシャツ裏返し人間。世間的には「あぶない人」。でもこの500円券を有効に使うにはこれしかない。
一度離れたが再び暴力少女に声をかけるも反応なし。
善意も下手に絡まれると家に火をつけられるかもしれん。今は昭和ではないのだ。自分にそう言い聞かせて、見ぬふりをして、隣のベンチに座す。急ぐ旅路でもない。
あと12〜13年もすれば、この父娘、今日のこの日も記憶から消え、「お父ちゃんのパンツといっしょに洗濯すな！」と言われるのだろうか？
少数派日記21
