少数派日記

社会派エロブログ、少数派日記です。

“安藤総理の少数派日記”

6346 錆びた夢の球宴

7/18/21

日米野球100年戦争 勝利と敗北1』

 観客の上限が5000人だから、というわけではない。『華』がないから盛り上がらないのだ。ここ30年の日本プロ野球オールスターゲーム。かつてのキャッチコピーは『夢の球宴
 
 星野仙一が投げ田淵幸一が捕ける。あるいは江夏豊が投げ木俣達彦が捕ける。バックにはONがいてセカンドは高木守道、ショートは一枝修平か藤田平か。打席には野村克也張本勲長池徳二。シッコがチビれるくらいに興奮した。
 
 こういう少年時代を送ることができた黄金時代に産んでくれた両親にまずは感謝。そしてONをはじめ、多くの「憧れ」たちにも感謝である。

 昨夜、西武球場のそれをテレビでチラ見した。なんだかなぁ〜。選手個々のスキルは当時と比べて格段に進歩している。それは映像のデジタル技術の向上と食いモンと科学の恩恵があるにせよ、若者たちの奮闘努力は素直に素晴らしい、と思う。
 しかし『華』がない、のだ。

 これは彼らのせいではない。時代のせいだ。
我々がガキの頃は「巨人の星」の野球と「タイガーマスク」のプロレスしかなかった。サッカーもラグビーもゲームもコンビニも麻薬もない時代。国民のオヤツといえばベビースターラーメンかカッパえびせん、ブルジョワの子はシスコ・ココナッツサブレだった。だから1個60円、誕生日に出るバタークリームの駄ケーキや、病気になると出る1本のバナナに狂喜乱舞、あの対比と似ている。

 年に一度か二度、友達の親が中日球場へ連れてってくれる。三河方面から名古屋へ汽車(名鉄)で向かうと、一旦、中日球場を通り過ぎてから、中日球場前に着く。青い帽子のガキどもは、時間にしてわずか1秒だけど、一瞬だけ車窓から球場の芝生が見える。そのため全員が汽車の窓にへばりつく。
「大島が見えた」「オレ星野見た」と大人には到底見えないものが見えていた。

 普段は無人駅の中日球場前から人が溢れ、球場に一歩近づくたびに、外に漏れる球場のカクテル光線が眩しくなる。中日球場を知る人ならわかると思うが、線路(高架というか土手)沿いのドヤ街を抜ける。ナイターがない日は無灯地帯、若い女性の一人歩きは自殺行為だ。少年たちは、この道すがらですでに興奮している。そしてビールとションベン臭の球場。眩しい。眩い。

 当時は選手のユニホームの背に名前はない。だがドラゴンズの選手なら全員わかる。持参したオムスビをどのタイミングで食べるのか、友達の親に聞く。当時はサランラップなるものはない。いや、そこは今よりも贅沢な竹皮に包まれた握り飯を試合前に頬張る。隣のおっさんの球場弁当も美味そうだ。「ちょっと失敬」とか言って、見知らぬおっさんの弁当の冷めた唐揚げに手を伸ばす厚かましさは、まだその頃にはなかった。

ここから本題です。前置き長くてすみません。

大谷翔平」。みなさん興奮してますよね。私もちびりそうでした。
しかし、自分の中に興奮する自分と冷めた自分がいるのです。

私は大谷さん出現当時から、スタローンの「ロッキー4」をずっと連想していました。ロッキーの最初の対戦相手でのちに親友となる黒人ボクサーのアポロが、ロシアのサイボーグのようなボクサー・イワン・ドラゴに殺されるのです。
もう引退して優雅な生活を送っていたロッキーが周囲の猛反対を押し切ってリベンジのためリングに上がるのですが、これはアメリカvsロシアの肉体対決といわれ、どちらがフィジカルの分野で先進かを競う科学戦争だったのです。

そしてロシアは綿密なデータをもとにコンピュータ管理された練習メニュー、食事管理、フィジカルチェック(あるいはドーピング)も駆使して最強人間・ドラゴを人工的に作るのです。
一方のロッキーは終始一貫アナログトレーニング。山に篭って木を切ったり、丸太を担いだり、気がすむまでサンドバッグを叩いたり、食事は相変わらず生卵4個一気飲みだったり、まるで墨田区泪橋下にある丹下拳闘ジムの矢吹さんと同じスタイルを貫いたのです。

さて私は、ここで、大谷さんが、性格の良いドラゴに見えてしまうのです。
だって凄すぎるから。
これだけ凄いのに、大谷の幼年期とか、トレーニングとか、日常とか、人間性にまつわる情報がまったく表に出てこないのが大谷=性格の良いドラゴ、と映る理由です。

大谷さんを見て感じるのは、野球エリート。しかも性格がいい。これはもう、自分からはかけ離れた非常に遠い存在です。
つまり親近感がまるで湧かない。
だからかな、そこに冷めた目で見る自分がいる。

星野仙一=短気、喧嘩っ早い、選手をぶん殴る。
江夏豊=ヤクザから腕時計もらう、監督とやり合う。
長嶋茂雄=人の話を聞かない、何言ってるかわかんない。
王貞治=台湾人でグランドでもひどい人種差別を受ける。
清原博和=クスリやる、平沼にバット投げる。
落合博満=外道。

つまりスネに傷持つスーパースターほど、自分にとっては親近感が沸き、他人事ではなく自分ごととして感情移入できるのです。

テレビのアナウンサーは紛れもなくエリートですが、特に女子アナのカマトトにわか連中が時勢に乗ったふりをして「ベッカム」「五郎丸」「大谷」と、時のアスリートたちに偽の拳を握り「興奮しました〜」と叫ぶ姿を見るにつけ、脱力するのは私だけでしょうか?まあキャツらはエリート様ですから別にええですけど、ウソ臭くて、こちらのヒガみも存分に入るわけだけど、まあ単なるミーハー臭満載というか。ホランちゃんだけは好きなので許すけど。

 それにしても、古田サンと前田サンの解説ってホントにつまんね〜。何にも取材してね〜し、テキトーだし、やる気ね〜し。
逆に憲伸ちゃんのメジャーオールスターの解説は凄かったね。いつメジャーリーグ観てんの?って感じ。ドラファンだからって贔屓するわけじゃないけど、聞いてて勉強になる。ああいう知識と経験に基づいた解説が欲しいですね。

(この項 つづく)

少数派日記21

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