611 ps中国3
最高の中国から、どん底の中国へ。
地球のどこへ行っても、日本のどこへ行っても、いい所と悪い所はある。それは人間に置き換えても同様だ。
中国という国と中国人という人種。日本人には理解できない部分が多々ある。それは相手も同じことを思うだろう。
中国という国と中国人という人種。それでも、いい部分が悪い部分よりわずかでも多いから、僕はこうして通ったのだろう。
「自他共栄」。少なくとも、僕の中国観はそうだった。
嘘と裏切り、弱い者を助けず、逆に搾取する、それも国ぐるみで。やるせない道だが、人は生きていかなければならない。
本日午後、上海の件をK会長に報告するため、下高井戸の本社に出向いた。僕の暗い顔を見て、K会長は先制攻撃をしかけてきた。
「安藤、希望や先の見えない報告ならいらない。それでも(騙されても)、人を信じなければ、商売なんてやってられないよ」
1億7000万円を、してやられた男はそう言って、明日からポーランドに新たなレストランの設立の視察に行く。もともとの資産家ではない。38歳まで月収28万円だったと聞いている。不動の姿勢は32年前に知り合った時から変わっていない。流石である。
今回は酷い目にあったが、僕らはこれを教訓にする。
酷い目にはあったが、S店長、N料理長と出逢うこともできた。
酷い目にはあったが、僕も、S店長も、N料理長も中国から一歩も引くつもりはない。
酷い目にあったからこそ、僕たちは必ずやリベンジしてやる。
そのリベンジの意味は、中国で人を信じるということだ。
とても怖い、勇気のいることだが、そういう人間と出逢うことこそが、真のリベンジだと、僕はそう思う。
S店長、N料理長はどう思うだろうか?